小平圭亮 (2014年受講当時 山形大学大学院修了)

 

「挑戦」という言葉を胸に、臨んだミュンヘン春季国際音楽セミナー。自然の美しさはもちろんのこと、数々の建造物がドイツの歴史を物語るミュンヘンで過ごした一週間は、瞬く間に過ぎ去ると共に、私の今後の音楽人生における明確な課題と、それに伴う指針を示してくれるものとなった。

 

今回のセミナーは、ホームページを通して知り、受講することを決めた。私自身、近いうちにドイツへの留学を考えているということもあり、現地に赴き、レッスンを受講してみたいという思いがあった。ドイツを訪れるのは初めてだったこともあり、不安な気持ちも少なくなかったが、その局面ごとに、運営の方々が丁寧に対応してくださり、気持ちよくセミナー当日を迎えることが出来た。

 

『ユーモアに溢れ、緻密で繊細。しかしその中に大胆さ、情熱が絶妙に交じり合い、圧倒的な音楽の構成力がそこには存在した。』この言葉が、セミナーでお世話になったミヒャエル・シェーファー教授のレッスンの感想である。曲に対する作曲者の想い、歴史的背景だけでなく、フレーズの捉え方、ダイナミクスの表現の仕方など、多角的に、分かりやすく指導して頂いた。私に関して言えば、「譜を詠み解く」ということが、曲を表現するうえでどれだけ大切なことなのかを思い知らされた。当たり前のことを当たり前に理解することは実は難しかったりする。しかし、それを常に探求し、実践することで、音楽というものは飛躍的に変化するのかもしれない。今回のレッスンで強く感じた。

 

セミナーを受講することが最大の目的なのは言うまでもないが、私にとってもう一つ、忘れられない思い出が出来た。それは人との繋がり。

このセミナーで私自身の勉強も兼ねて、ホームステイの希望を出した。お世話になったDr. Gerbitzご夫妻のお宅では、積極的にコミュニケーションを取り、さまざまなドイツの文化を吸収することが出来た。といっても、私はドイツ語も英語も日常会話程度しか話すことが出来ず、決して滞りなくコミュニケーションを取ることが出来たという訳ではなかったが、Dr. Gerbitzご夫妻の温かいお人柄と優しさに何度も救われ、笑顔たえない時間を過ごすことを出来たことは、根強く心に残る大きな出会いとなった。

 

また、セミナーを共に受講した仲間との時間も欠かせないものであった。セミナーでのレッスンは楽しいことばかりではなく、悔しい思いもあれば、自分自身に置かれている現実と向き合わなければならない時間も少なくなかった。曲と向き合い続け、何度も葛藤を繰り返している時、仲間の何気ない一言が、私を次のステップへと誘導してくれた。互いに高め合い、助け合い、励まし合いながら過ごせた仲間がいてくれたからこそ、より充実したセミナーを過ごすことが出来た。

 

 

このミュンヘン春季国際音楽セミナーにおいて、お世話になった小長久美様をはじめ、受講生友の会の皆様、先生方、お世話になりましたすべての方々に、心より御礼申し上げると共に、私自身、今後も社会の両輪である学問と芸術において、何事にも探求心を持ちながら、より豊かな心を養っていけるよう、「挑戦」していく所存である。